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コラム

新疆ウイグル自治区農業・産業視察 ~その3~

2010/05/27

新疆ウイグル自治区農業・産業視察 ~その3~
 
佐々木 清美
 
 
1231日 
瑪納斯市
(5) 新疆中信国安葡萄酒業有限公司
同社の前身は1998年に設立された新天国際葡萄酒業有限公司という国有中央企業で、2009年5月からは現在の名称になった。以前は新疆建設生産兵団が大株主であった。新疆内には瑪納斯、石河子、ホルゴス、噸埠康に工場を持ち、そのほか上海、山東にボトリング工場を持つ。瑪納斯工場の加工量は6.5万トン/年と最大規模を誇る。現在国内に23の分公司、事務所を持ち、国内で同社産のワインが販売されているほか、フランス、ドイツ、スエーデン、カザフスタンなどに輸出されている。かつてはフランス・オーストラリアから醸造方面の技術者を招聘したこともある。
新疆での葡萄栽培の優位点は、(1)地区、気候が最適(2)温度差が大きく、日照時間が長い(3)、砂礫土壌で水はけがよい(4)土壌汚染が少ない。害虫がわかないので農薬を多く使わなくてよい(有機・緑色食品)(5)面積が広く、人口が少ない といった点にある。
彼らの考えとしては、新疆は葡萄が有名であるが、「新疆ワイン」としては国外はおろか、国内での知名度もまだまだ低いという。中国国内消費者のワインに対する知識は豊富とはいえず、ブランドを見てワインを買うという傾向にある。よって、外国産ワインや国内で有名な「長城」や「dragon seal」といったブランドばかり注目される。品質には自信をもっているのだが、ブランド戦略が進んでおらず、新疆が都市部からとおいということもあり輸送コストがかかるという不利な点がある。新疆のワインは中国ワイン輸出量の90%を占めているというが、製品化したものを売るのはまだむずかしく、半製品(バルク)での販売が大多数を占めているのが現状である。今後はブランド戦略とともに、3年以内に完成品を出荷する方向にシフトしたいと考えている。
 
同社と日本との関係は、そもそも新疆で葡萄栽培にまでさかのぼる。1980年代、日本酒造メーカーが石河子市で新疆建設生産兵団との協力プロジェクトを開始し、1985年に、ワインに適した土地であると結論づけたことから始まった。
その後、千葉大学の石井教授(栽培)、内藤教授(醸造)により、テスト・研究開発が進められ、多くの資料を残していった。そして1998年より製造が開始された。
酒造メーカーとの協力プロジェクトは92年に終わり、合弁は成立しなかった。だが当時新疆に来た関係者とは個人的レベルでのつきあいは続いている。
また日本への輸出について、酒税が高くなるので、原液で輸出するというビジネスモデルも考えられるが、会社としては製品として販売したいという意向がある。
日本のワインはほとんど輸入であり、また日本国内のワイン製造業界はそれほど大きな力を持っているとはいえず、いわゆる新疆ワインの対日輸出拡大に障壁となる業界対抗勢力がないといってよい。そういう意味では外的要因として売り込みやすいというのはあるだろう。また新疆は自然環境が低農薬農業をやりやすくしており、organic製品を推進することができる。日本の中国に対する農産物のイメージはネガティブなものであり、市場の成長を阻害する要因となっているが、この新疆の農産物が中国のイメージをアップさせる突破口になりうる。
 
余談であるが、葡萄の絞りかすは種と皮に分けられ、種は搾油用(グレープシードオイル)及びポリフェノール抽出用に、皮は飼料として販売されている。ただこれらの処理工場は新疆内にはなく、外省の工場で行われているとのことである。
 
 
(6)新疆農業職業技術学院 イスラエルハウス栽培見学
農業学院では、イスラエルとの国家合作プロジェクトであった施設園芸農業を視察した。プロジェクトは温室4棟(1.2ha)と2500ムーの露地灌漑農業を行った。温室は03年5月に建設が始まり、2004年~2008年まで各種技術指導がすすめられていた。プロジェクト終了後は視察は無償提供され、現在は花器類(蘭)生産をメインに利用されている。
 
新疆農業職業技術学院は1959年に設立された職業学校であり、全国1240校の職業学校のなかの28重点学校の一つである。学内には9学部、64学科あり、現在は生徒1万人、職員560名、敷地面積(本部のみ)37ha、実習地139haを有する。
学生の就職率は98%と非常に高く、第1位である。これは卒業前に実習という形で企業が学生を囲い込み、3年期間のうち最後の1年は半分学生、半分職員として実習地に赴いている。先に行った乳牛基地はまさに彼らの実習地である。
 
同校と日本のつながりは深く、すくなからぬ職員には日本への留学経験がある(帯広畜産大学など)。客員教授として大久保・上原(元帯広畜産大学)両氏の名前が挙がっていた。
日本との実務的な合作関係については、調査・講演はあるし、研修を受け入れてくれているが、具体的な成果が上がっていない。大阪産業大学・大阪短大と農業機械協力プロジェクト(農業機械整備)が09年7月を予定に進められていたが、暴動のため延期になってしまった。付属農場に国家・省レベルのモデル基地を建設し、そこに日本農業研究所を設置したいと思っている。また日本への研修派遣事業を進めたいとも考えており、そのためにJICAに日本語教師の派遣を依頼しているが、いまだ返事が来ない状況である。
現在学校にはロシア語、英語の授業がある。もしJICAが日本語の先生を派遣してくれたら日本語の授業を設ける。留学生はカザフスタンなど近隣諸国の留学生を中心に100名ほどおり、日本人留学生も歓迎する。
 
新疆は180万haの果樹園、15haの施設農業が行われているが、農業機械が揃っていない、という問題もあり、機械化の導入とそのメンテナンス技術が必要。
ここは国家級農業モデル地区でもあるので、合作ができたら土地・税金の優遇政策が受けられるので、メリットはあるとおもう。